2006年03月23日

風邪(カゼ)とインフルエンザについて

風邪と上手に闘い治すのが東洋医学

暖かい日がつづいていたかと思うと、とつぜん寒くなったり、いまの時期は気候変動が激しく、風邪をひかれている方も多いのではないでしょうか。今回は、この時期わたくしたちを悩ます風邪についてお話したいと思います。

みなさまは、「風邪(カゼ)」というと、病院に駆け込み、西洋医学の治療をお受けになる方が多いのではないでしょうか。「風邪(カゼ)」の治療は、西洋医学だけではなく、東洋医学にも優れた治療があります。

それではまず、西洋医学と東洋医学の違いを簡単にご説明いたしましょう。

西洋医学では、風邪の原因はウイルスであると考えていますが、たくさん種類があり特定が難しいため、特効薬がありません。あくまで症状を軽減させるための薬を使います。このように、患者さんの症状に対しておこなう治療を対症療法といいます。高熱に解熱剤を用いたり、疼痛(とうつう)に鎮痛剤を使うのも対症療法の一つです。

一方、東洋医学では、「冷えにあてられ風邪をひく」と考え、鍼灸や漢方薬を使い、風邪の治療を行っていますが、その治療は対症療法ではありません。症状に直接アプローチするというよりは、自己免疫力・自己治癒力を高め、風邪とうまいこと闘い、治すという方法です。

風邪のバイブル『傷寒論』―風邪には葛根湯だけではありません―

傷寒雑病論―『傷寒論』『金匱要略』
傷寒雑病論―『傷寒論』『金匱要略』 日本漢方協会学術部
中国ではすでに、およそ1800年前に風邪の治療について書かれた本があります。それは、中国、後漢の時代に張仲景(ちょうちゅうけい)が著した『傷寒雑病論』(しょうかんざつびょうろん)です。

『傷寒雑病論』は『傷寒論』と『雑病論』(後に『金匱要略(きんきようりゃく)』として世に出る)から成り、このうち『傷寒論』は、風邪の治療について書かれたものです。

傷寒とは風邪のことで、これにはインフルエンザも含まれます。

『傷寒論』の著者である張仲景の一家は200人以上いましたが、10年ほどの間に3分の2が死亡し、そのうちの7割が傷寒による病死でした。この場合、いまでいうインフルエンザと思われます。そのため、無念の思いを抱き、なんとか風邪で亡くなる人々を助けようと、風邪の治療を研究し、まとめあげたものが『傷寒論』です。

この本のすばらしいところは、昔に書かれたものでありながら、現代でも通用し、治療にいかせる普遍性をもっていることです。

ここで、『傷寒論』について、簡単にご説明いたしましょう。

『傷寒論』では、太陽病(たいようびょう)・少陽病(しょうようびょう)・陽明病(ようめいびょう)・太陰病(たいいんびょう)・厥陰病(けついんびょう)・少陰病(しょういんびょう)の6つの経で分類し、症状・経過・適応する漢方薬について書いています。

1.太陽病

表証(からだの表面近くの病)。 症状は、頭項がこわばり、悪寒がします。 太陽病は、大きく、太陽傷寒証と太陽中風証の二つに分かれます。 太陽傷寒証は、汗が出ず、漢方薬は麻黄湯や葛根湯が適応になります。 太陽中風証は、だらだらと汗が出て、漢方薬は桂枝湯が適応になります。

2.少陽病

半表半裏(からだの表面と奥の間)。 症状は、口が苦く感じ、のどが渇き、寒気がしたり熱くなったり、悪寒と熱感を交互に繰り返し、胸脇部が張って苦しくなることもあります。 少陽病は体質などにより様々な状態になるため、漢方薬は、小柴胡湯などの柴胡剤を体質などの状況に応じて使います。

3.陽明病

裏証(からだの奥)。 症状は、からだの表にあった病が奥に入り熱化するため、高熱が出ます。 陽明病は、大きく、陽明経証と陽明腑証の二つに分かれます。 陽明経証は、漢方薬は白虎湯など、陽明腑証は、承気湯などが適応となります。

4.太陰病、5.厥陰病、6.少陰病

これら三つの陰病は、体力が甚だしく衰え、治療が難しい段階に入ります。
風邪をひくと通常は、からだの表面近くの病である太陽病から始まり、少陽病→陽明病→太陰病→厥陰病→少陰病と進行し、だんだん重篤な状態となります。ただし、体質や状況により、直接、陰病になったり、二陽経が同時に発症したりということもありますので、風邪には注意しなくてはいけません。

風邪にもいろいろな種類があります。風邪をひいたら葛根湯と考えがちですが、先ほどもご説明したとおり、葛根湯を飲んで効果があるのは、太陽傷寒証の場合であって、それ以外の場合、必ずしも思うような効果をあげることはできません。自己診断で間違った漢方薬を使えば、かえって悪化することもあります。漢方薬をご使用になりたい場合は、必ず、医師・薬剤師の先生とご相談くださいね。

東洋医学における風邪の治療の流れ

東洋医学では人間のからだを総合的に診断をし、治療をしていきます。東洋医学では、これを弁証論治(べんしょうろんち)といいます。
弁証は4つの診断法に基づいておこないます。これを四診といいます。四診とは、望診、聞診、問診、切診のことです。

  1. 望診(ぼうしん)・・・舌や顔色、体型などをみます
  2. 聞診(ぶんしん)・・・声・話し方、体臭などをみます
  3. 問診(もんしん)・・・症状や日常生活についてお話をききます
  4. 切診(せっしん)・・・脈や全身のツボの状態をみます

この4つの診断に基づき、みなさまのからだ全体の状態をみて、現在の病の状態を把握します。
つまり、この人は、もともとの体質がこうで、これまでこういう病気・怪我をし、こういう生活を送り、だからこういったからだの状態になったと考えるのです。この診断法がすぐれているのは、過去から現在の状態を類推することができるだけでなく、今の状態が続けば、将来的においてこのような状態になる可能性があるかと予測ができるという点です。

当院では、この漢方薬の治療の考え方を応用して診断をおこない、対応するツボに鍼や灸をして風邪の治療をおこないます。

昔から「風邪は万病のもと」と言われますが、風邪により自己免疫力が衰え、それが引き金となり、他の病気を併発したり、持病が悪化するからです。風邪だからといって、おろそかにしてはいけません。風邪に強いからだになるためには、自己免疫力を高めることが重要です。

からだ全体のバランスを整え、自己免疫力・自己治癒力を高める鍼灸治療は、風邪の予防法として、また風邪の治療法として最適な治療法だといえるでしょう。鍼灸治療をお受けになったことのないかたは、風邪を引く前に、是非一度お受けになってくださいね。

※「風邪」の表記について

東洋医学(中医学)では、「風邪」という漢字を「フウジャ」と読みます。
「フウジャ」と「カゼ」では、本来概念が異なる別物なので、中医学の世界では、「かぜ」を表記する場合、「風邪」ではなく、「カゼ」もしくは「かぜ」と表記しています。
しかし、一般的には、「かぜ」のことを「風邪」という表記をすることが多いため、今回の文章内では、一般の方になじみの深い「風邪」という表現を使いました。
特に、鍼灸専門学校の学生の方やその他東洋医学関連のみなさまはご注意ください。
カゼと風邪(フウジャ)の違いは別の機会にお話いたします。

参考文献:
中国傷寒論解説『中国傷寒論解説』
(劉渡舟著、勝田正泰・川島繁男・菅沼伸・兵頭明訳、東洋学術出版社)

『中国傷寒論解説続編基礎と方剤』
(劉渡舟著、勝田正泰監訳、東洋学術出版社)

『現代語訳宋本傷寒論』
(劉渡舟・姜元安・生島忍編著、東洋学術出版社)

投稿者 syoyodo : 00:02 | コメント (0) | トラックバック (0)

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